終活という言葉が一般化して、事前に葬儀や供養のことを考えることが「縁起でもない」と言われることはほぼなくなったと思います。
しかし様々なご相談をお聞きしていて、まだまだご家族が亡くなって慌ててご相談の連絡をいただくというケースは多くあります。
そこで初級編として「この状況は避けた方がいい」「まずこの先入観は持つべきではない」という、最低限知っておいていただきたいこと、をお話したいと思います。
ちなみに私個人は両親と伯父を送り、3回喪主を務めた経験を持っています。
1.避けたいこと
大切な方が亡くなった時に、病院、介護施設、警察署からの紹介業者にそのまま葬儀段取りを任せてしまうこと。
もちろん決して全てのケースに当てはまるわけではありません。例えば事故などによる不測の事態に予め備えておくなどということはできません。
しかし、
- ・ ご両親や親族の一定の介護期間がある、余命宣告を受けた
- ・ ご高齢のご両親が遠隔地でお二人暮らし、あるいはおひとりで暮らしておられる
このような場合は予め複数社の葬儀社に「相見積もりを取ってもいいか?」と断った上で相談しておくことは決して悪いことではありません。葬儀社側もまだ葬儀の必要の生じていないご家庭とコンタクトが取れますから見積の相談には快く応じてくれるはずです。
問題はご家族が亡くなった時にどこの葬儀社とも付き合いがないケースです。病院や介護施設、警察署からの紹介となると、葬儀社も初めてご家族と接することになりますから、葬儀の規模やご家庭の宗派、どのような葬儀で送りたいか?など、完全に想像からインタビューを始めることになりますし、できれば間違いなく自社に誘導して単価を高くしたいという業者もいるかもしれません。
故人の家族も葬儀など慣れているはずもありませんし、人が亡くなっているわけですから気持ちは動転しており、とても冷静な判断などできない状態でエンゼルケアからご遺体の搬送、直ちに葬儀の打ち合わせと考える間もなく事は進んでいきます。
一般消費者の方が葬儀でまず頭に浮かぶのは、
① 不必要に高いお金を払いたくない
② 段取りや作法がわからずどうしていいかわからない
この2点かと思います。
下調べや準備なくことが生じて流されるままに進んでいく、というのが葬儀では最も避けるべき事態ではないかと思います。大切なご家族が危険な状況になり、慌ててスマホで安い葬儀社を探す。このパターンが最も避けるべき行動です。
2.先入観をなくそう
「うちは家族葬でいい」「散骨でいい」「樹木葬でいい」
こうお考えでしたらまずこの考えを捨ててください。
私の経験上、このセリフを言う方はまず間違いなく「そうすれば安く済む」とお考えです。また家族葬、散骨、樹木葬を一緒の「葬儀」という漠然としたイメージで考えておられる方がとても多くいらっしゃいます。家族葬は「葬儀」散骨と樹木葬は「供養」のお話でまったく別のものになります。
① 「家族葬なら安く済み、家族に面倒をかけなくて済む」の間違い
「終活」をしなくちゃ!と考えてまず多く見られるのが葬儀社のチラシを集める方です。
そして家族葬の金額を比較して、同じチラシに書いてある直送(ちょくそう)の金額に目がいきます。
私のオフィスのある西東京エリアで8万円台から15万円ほどでしょうか?確かに安くあがりそうです。葬儀社の提示する内容にそのまま従えば、の話ですが。
先に結論を書きますが、家族葬でOKのご家庭は、参列の方が少数親族に限られており、遠方の親族やご家族がお勤めの会社や町内会、ご友人などにきちんと「〇〇が亡くなったが、親族のみで葬儀を上げるため弔問をお断りします」と言い切れるご家庭のみです。
このケースなら家族葬かつ1日葬(通夜なし、葬儀+告別式の1日で終了)でも葬儀は成立します。
別の機会に触れますが、葬儀には「社会告知機能」があります。お世話になった〇〇が永眠しました、と生前にゆかりのある方々へお知らせと故人とお別れをしていただく機会を提供する機能です。
家族葬を済ませたご家庭あるあるで「なぜ知らせてくれなかったのか?伺ってお線香をあげたい」「親戚のおばあさんがなんとしても仏前に伺いたいと言っている」などと葬儀後の弔問が後を絶たず困ったというのがよくあります。そうなると香典の返礼品の手配などが約1か月に渡って終わらなかったなどということにもなるわけです。
家族だけで静かに見送りたいという場合には、きちんと参列する親族の範囲を決めておき、家族それぞれの付き合いや故人の友人知人関係を把握しておき、挨拶状の内容などを葬儀社に相談して文案を考えてもらうなどの作業が必要になります。
ちなみに一般葬と家族葬に中身の違いはまったくありません。
あくまで葬儀に参列する人数の違いに過ぎません。一般葬にしておき弔問を受けた方が、いただくお香典の合計額で結局は家族葬より出費が少なかった、ということも葬儀あるあるです。
私の父の葬儀の時、葬儀社の担当者の方にはっきり「家族葬は無理です」と言われました。それは私自身が経営者であり付き合いも多く、地元町内からも弔問客が来られる、親戚も多いという事情からですが、本当にその通りでした。
親としては金銭面もさることながら、面倒な親戚付き合いも葬儀を家族葬で済ませればその後は迷惑をかけなくて済むだろう、というのが家族葬を選択したいという大きな理由だと思います。
ところが実際にはそうはならず、あとになって親戚の重鎮の伯父様や伯母様から怒られてしまった、などということもあり得ます。
葬儀は大切な親族に死を受け止めてその後の供養に向かうための大切なイベントです。それが思わぬ苦い思い出になってしまわないよう、ご家族が元気なうちに話し合っておきましょう。
② 散骨、樹木葬
どちらもご遺体を火葬してからの埋葬のお話です。
お墓という選択をしない方、ご家庭も増えています。散骨は海や山にご遺骨を粉骨にして撒くもの、樹木葬は文字通り樹木や石などのモニュメントの周辺にご遺骨を埋葬するものです。散骨はまだまだ海洋散骨が主で、山への散骨というのはまだごく少数です。
樹木葬については、ひろくこのエリアのどこかに埋葬されましたよ、というのと、ご家族はここですよと場所がわかるものに分かれます。料金は場所がわかるものの方がたいてい高くなります。
ここでは葬儀のお話ですから、その観点でお話しますが、この説明で自分の葬儀について語るときに「散骨でいいや、樹木葬でいいや」というのはまったく意味をなしていないというのはお分かりいただけるかと思います。
散骨、樹木葬を選択してもかならず「火葬」のプロセスが入りますから、亡くなった場所から火葬までのご遺体の搬送、枕経、戒名を付けるなど宗教者による宗教儀礼、葬儀+告別式を執り行うかどうか?など葬儀をどうする?の問題は必ず生じることになります。
いかがでしょうか?家族葬や散骨、樹木葬なら安く手間がかからないというのは、まったく根拠のない先入観だというのはおわかりいただけるかと思います。
3.やっておくべきこと
① ご遺体の搬送について、ある程度想定しておく
- ・ お住まいの地域の斎場がどこにあるのか?
- ・ 病院や介護施設と斎場の距離
- ・ 自宅葬儀を希望する場合は病院、介護施設と自宅、斎場の距離
これらを確認しておきます。
大切なのはまずご遺体をどこへ運ぶのか?です。自宅での葬儀が少なくなった昨今、地域により違いはありますがまず公営斎場の部屋を借りて葬儀をする、もしくは民間葬儀社のホールで葬儀をする、というのが多いケースかと思います。
しかしご遺体を運んですぐに葬儀ができるわけではありません。お部屋に空きがないとその間、どこかにご遺体を運んで保管してもらわないといけません。まずそのご遺体の移動距離によって搬送料金が異なってくる、というのを知っておく必要があります。
搬送会社と葬儀社が異なるケースは多く、たいていは葬儀社がいったん立替えて搬送料金を支払い、後で葬儀代と一緒に支払うということが多いと思います。
この時、ウチで葬儀をしていただければ搬送料金はサービスしますよ、などというケースもあるかもしれません。トータルコストが予算内ならいいかと思いますが、その後部屋が大きなところしか取れない、従って祭壇が豪華になり料金がアップするなど、次々と想定外の料金が加わり結果として高額な葬儀になってしまった、などということがないように、やはり葬儀会社と事前に打ち合わせをしてきちんと見積を取っておく、というのが思わぬ料金になってしまうことを防ぐのに有効です。
逆に少ないかもしれませんが、搬送業者と予め知り合いになっておければ、適正な搬送料金の提示と葬家に合った葬儀をしてくれる葬儀社を紹介してくれるなど、メリットもあるかもしれません。
非常に簡単に身も蓋もないことを書いてしまうと、ご遺体を持っていかれたらほぼその先は葬儀社に従うしかなくなってしまう、ということです。葬儀に関する知識は一般消費者より葬儀社の方が圧倒的ですから、ほとんどのケースで言われるがままになってしまうでしょう。
一方葬儀社の方々が緊急時に付け込んで消費者をだまそうとする、というのはほぼ間違いなくありません。さきほども書きましたが、呼ばれた葬儀者の方も少ない情報の中で事後の供養まで見据えて様々な提案をしてくれます。問題はその際に希望を伝えられない、実は我が家の宗派のことをよくわかっていなかった、故人の希望など聞いたことがなかった、という消費者側のエラーも潜んでいます。
葬儀は故人の供養のためだけでなく、送る方々の心のケアをする場でもあります。このことを葬儀社の方は知っているので、相当の気遣いのもとに様々な提案があるというのを知っておきましょう。
② ウチの宗派を確認しておく
いかがでしょうか?宗派を聞かれて答えられない方はけっこうおられます。
最近はご家族が亡くなっても戒名は付けず、宗教者による読経を省くということもあります。
確かに通夜+葬儀告別式、初七日の読経と戒名でお布施がおおよそ30万円以上、地域によっては100万円が下限というところもあります。また葬儀社経由で宗教者をお願いすると安くなることもあります。
宗派とご家族が付き合いのあるお寺がどこか?がわかれば早めにお寺に相談し、おおよその予算を考えておくことは重要です。もっともお寺は聞いても「お気持ちで」とお答えになるはずです。
普段からおじいちゃんおばあちゃん、ご両親にお寺とのお付き合いの内容を聞いておきましょう。
宗教儀礼を省く場合には、ぜひその後の供養をどのような形でというのをご家族で話し合っておきましょう。
例えば位牌を作って家で供養したい、という場合には位牌には俗名を記すことができます。このあたりは仏教なら各宗派でおおよその作法がありますからお寺に相談すればOKですが、ご自身でオリジナルに供養したいという場合、そもそも常識やスタンダードはありませんから自由に考えることができます。
故人のことを忘れないこと、ご自身が供養を通じて故人と繋がることができること、お子さんやお孫さんに故人のことを伝えることができること、こうしたことを念頭に様々なサービスを利用されるといいかと思います。
位牌、お骨を使った宝飾品、過去帳など、様々な手元供養品があります。またお墓も墓石は様々なオリジナリティあるものが造れますし、海洋散骨などは業者によっては散骨した海域の緯度経度などを記した証明書を手渡してくれるところもあります。
宗教儀礼、手元供養のコストもお葬儀関連費用として考えておきましょう。
③ 埋葬/供養について確認しておく
お墓があればこのコストは納骨時の石屋さんへの支払いと、宗教者の読経があればお布施等、ご親族が集まるなら食事代等の必要があります。
葬儀後、散骨や樹木葬での供養を検討されているなら、ご家族の希望を確認するとともに複数社の見積を取っておきましょう。また故人のお孫さんにあたる方、その先の方々が「私のおじいちゃん(ご先祖)って誰?」などとならないよう、過去帳やある程度保存のきく資料など、戸籍謄本を元に作成しておくとよいかと思います。
以上のように、まず葬儀の面では最初にどこにご遺体を運んでどのような葬儀をしたいか?費用面では葬儀+宗教儀礼+埋葬/供養まで一連で予算を考えておく、というのが葬儀を考える上でとても大切なポイントになります。
葬儀の話題について今回は初級編というタイトルでお話をしましたが、いずれ中上級編というタイトルでお話をさせていただきます。